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2015/06/01 (Mon) 23:01


6月の初め、友人は
「今日、蛍見に行かない?」と言った。

そんな言葉、私が育った環境では
まず聞いたことがない。

福岡の人は、贅沢な暮らしをしている。
365日の中に「今から蛍を見に行く」という選択肢がある。

いや、東京にもあったのかもしれない。
単に私が知らなかっただけなのかもしれない…。

川のそばに住んでいる人は
それが日常の一部なのかもしれない。

誰かの日常は、
誰かの非日常。

それはこの間の旅で知ったことだ。


車で蛍の川へ向かう。
窓から満月に近い月が見えた。

どの道を選んでも
変わらず月は浮かんでいる。

月の色がミルクみたいだなあと思った。
昼間に母乳の話をしていたからかもしれない。

遠くの山に鉄塔の灯りが見えた。
近くでは看板の光が叫んでいる。

私の目は眩しい夜に慣れていた。

30分程すると、地上の光は薄れてゆく
緑の匂いと共に生き物の声が沢山聞こえてきた。

蛍の川に着いた。

木々が茂る川の畔に、
見たことのない光が見えた。

目を凝らす。
だんだん、だんだん見えてくる。

森の暗闇に
星空が広がっていた。

空との境目は一体何処にあるのだろう。

緑の光は、ふわふわと宙を舞う。

写真を撮ろうとすると
iPhoneは蛍より、月より、眩しく光った。

慌てて明かりを消した。

月に照らされながら
私達は夢の様な時間を過ごした。

蛙の声、虫の声、川の音、
沢山の生き物の中に私はいた。

友人の声がした。
「蛍の寿命は成虫になってから一週間くらいらしいよ」
「セミみたいだね」

成虫になって一週間とは
私にとって、人生のどの時期にあたるのだろうか。

子供達は川の石を渡る。
危ない危ないと言っても、進んでいく。

手をぎゅっと握りしめながら
守られているのはどっちだろう、と考えた。

空の境目などない。
宇宙は鼻の先から始まってるってさ。



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