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2006/04/04 (Tue) 02:12
たそがれてたら、
4月になってた。
なんとなく、家のことを
書こうと思い立つ。

私の家は、洋服屋で、
父と母と祖母はテーラーだ。

家に帰ると、
糸とミシンとアイロンと、みんながいて
仕事をしながら
「おかえり」と言ってくれる。
私は、テーラーのことをよく知らなかった。
この年になるまで。
なぜか、詳しく聞こうと思わなかったし
両親もまた、話さなかった。

このあいだ、スーツ好きのオシャレな友人が家にきて
「俺は音楽やってなかったら、テーラーか、靴職人になりたかったんだ。」
といっていた。

昔のミュージシャンはオシャレで
マイルスにしても、リーモーガン、アートブレイキー、
ハンコック、ロンカーター、レイブラウン、デクスターゴードン

みんないいスーツを着てステージに立っていたという。
それがとてもかっこよかったようだ。

友人の靴は、いつもピカピカに磨かれ、
スーツはとてもきれいで、ものに対する愛情が垣間見える。
そしてそんな彼に答えるように
靴もスーツも彼のために輝いていた。
彼は、立っているだけで、凛と、美しく見えた。

友人がスーツについて
父と嬉しそうに話をしているのを見て
なんだか私も嬉しくなる。

彼は、ビンテージ物の生地でできたスーツを触ってはため息をつく。
「はー。これは、すごくいい生地だ。」
私は、小さいころから見ているからなんとも思わない。
だが、友人は続けた。


「形がいいですね。こんなのを着てステージに立てたら。」
父は「着てみるかい?」といって彼にスーツを着せた。
彼は、着心地のよさに驚いた。
私は、そんなに違うものかなぁ?といった目でみていると
「全然違うよマキちゃん、体にフィットする。軽いよ。」
と目を輝かせた。

今、テーラーについて、興味を持っている若い人が増えているらしい。
「手作り」が見直される時代がやっとやってきたようだ。


父と、母と、飲みにいく。


「いやぁ、若いのにテーラーに興味を持ってくれてうれしかったなぁ。」

今、既製品が主流になっていき、
腕のいいテーラーが窮地に立たされていることは、私も知っていた。

父は続ける。

「お父さんは、その人の癖や趣味やその人の聴いている音楽を知って、
一緒に洋服作りがしたいんだ。」

最近、うちにくるのをとても楽しみにしているお客さんがいる。
例のビンテージものスーツのお客さんだ。
お客さんは夢を持って、うちの洋服店にやってくる。
父は洋服のことについて本当にいろいろ知っているから
お客さんの要望に、あれやこれや提案を重ねて
お客さんと一緒に服作りをする。

この作業がとても楽しいらしい。

父は、その後も洋服について語り続ける。
この人は、本当に、洋服を愛しているのだな。
アメリカスタイル、ブリティッシュスタイル、アイビー、ブリティッシュアメリカン、
ファッション、文化、デザインの移り変わりについて・・・などなど
父がこんな風に洋服のことを語るなんて、はじめてだった。
今まで一緒に生きてきて初めてのことだった。

かっこいい。
彼の目はまぎれもなく「職人」だった。
わたしは身震いがした。


ものをつくるという作業は、奥が深い。


ほろ酔いで店を出る。
高校の時にバイトしていた、実家の近所の釜飯屋さん
(釜飯もだけど、ここの串焼きが美味いんだ!)
あのころ、ここのバイド代で塾に通っていた。

これ以上、お世話になれない、と子供ながらに感じていた。
時代の流れは容赦なかった。
近所には、大きな既製品のスーツ屋ができて
街のテーラーはなくなっていった。

それでも、両親は、何も言わずに
洋服を作りながら私を育ててくれたのだ。
両親だけではない。
祖母も、曾祖母も、
私に食べ物を、言葉を、ピアノを、造形を・・・


手のひらを見上げる。
私の中で命が燃えている。

この命は
誰かに助けられ、栄養をもらって、
ここにいたるものだ。


ありがとう。


父と、母の後姿を見送る。
今年も春は咲くのだ。

明日もあさっても、
彼らはその手で、その指で、服を縫う。

あの人は、左手のほうが長い。
あの人は、左利き。
あの人は、右の肩が上がってる・・・

一生懸命考えて
一針一針に、愛情がつまってる。
一言一言を紡ぐ、作詞に似ている。


ものをつくるという作業は、奥が深い。

私はあなたの子だよ。




日常 | comments(7) | trackbacks(0)




COMMENT


かっこいいです!かっこいいですよね、何かを作る手、働く父の手、大きな手。私もきれいじゃないゴツくて分厚い父の手大好きでした。
| たまき | 2006/04/07 11:50 PM |
コメントありがとうー!
なんか変な卑猥なサイトからの書き込みが多発したので
一時期コメントを受け付けなかったのだよ。

だけど、そろそろいいかなぁと思って
書き込めるようにしたら、
みんな書き込んでくれなくて
ああ、やっぱり、そうだよなー
なんて思ってたら

たまき君が書き込んでくれた!
うれしいぜ。うれしいよわたしは。
マッケンロー
| マキ | 2006/04/08 2:51 PM |
あれ、今気付いたんだけど
これコメント書き込むときに
暗号みたいの入れなきゃいけないみたいだね。
セキュリティを強化したのかしら。
だから、最近卑猥サイトのトラックバックとかが減ったのかな。
| マキ | 2006/04/08 2:52 PM |
おひさしぶり〜。
ほんとに。最近ごぶさたしておりますわ。
こないだ二角形と池ノ上行ったんだけど、ぱつんぱつんでさぁ!
残念でしたわ。

お父さんの話良い話だなぁ。
マスター・オブ・ライフにならなくてはね。ジャンルは何であれ。オレも頑張らねば…。
| あや | 2006/04/09 4:20 PM |
確かに…この前書き込んだつもりが書込めてなかった…。自分のミスだと思ってたけどそのせいだったのかな?まじで関係ない迷惑な書込みムカツクよね(怒)でもなんだろう…まちととは読んだだけではいられなかったよ(^_^)これからもちょくちょくのぞきます!
| たまき | 2006/04/10 12:02 AM |
お久しぶりです
本日お父さんがいらっしゃってくれたのですが、
しっかりと挨拶できませんでした
すいません 宜しくお伝え下さい(_ _)

ものつくりって大変ですよね
感動させる位のモノになればもう芸術ですよ

感動するのを知ってるから職人続けられるんでしょうね
かっこいいです
| 近所のコック | 2006/04/11 1:21 AM |
>あやちゃん
久しく会ってないわね。さびしいわ。
あのライブは本当によくて
みせたかったよー!
二角形さん元気してますか?
よろしくお伝えください。


>たまきさん
のぞいてください。
うれしいなぁ。
ちゃんとしたコメントってうれしいよね。
えへへ。


>近所のコックさん
えーとえーと
どなたでしょう?
近々父に聞いてみます。
感動させられるくらいのものになれば
芸術か。
なるほど、そうですね。
食べ物もそうですよね。
| マキ | 2006/04/11 2:25 AM |
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